「名は体を表す」を地で行く漫画〜島本和彦『無謀キャプテン』(1)(2)
- 作者: 島本和彦
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2010/06/03
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当時(1992年)、少年キャプテンで連載が終了したばかりの『逆境ナイン』の熱覚めやらぬ 中、大々的な予告とともに連載が開始された作品だったからだ。
『逆境ナイン』は島本和彦の代表作と言ってもいい名作で、同じ全力学園を舞台とし、ハギワラや校長など引き続き登場するキャラクターもいる本作は、続編的な要素も持ち合わせている。
しかし、「無謀」というテーマ、そして、主人公「堀田戊傑」の名前のとおり「自分の墓穴は自分で掘る!」というキャッチフレーズの意味がわからない!当時からそう思っていて、結局よくわからなくなって、途中で読むのを止めてしまっていた。
実際、この連載を引き受けること自体が「無謀」だったことが、2010年版の巻末に収録されているササキバラゴウとの対談でも繰り返し言われているし、Wikipediaでは簡潔にまとめられている。
『逆境ナイン』終了後、島本和彦は非常に多忙な状態にあったが、編集の訴えに男を感じ無謀にも『無謀キャプテン』の連載を引き受けてしまう。更に掲載誌の予告で『「逆境ナイン」に続き島本和彦が贈る男の道三部作・第二弾 無謀キャプテン』という第三弾まで描くという無謀な告知までしてしまう。ただ『無謀キャプテン』の読者ウケがあまり良く無かったため、男の道第三弾が連載される事は無かった。
だから、『無謀キャプテン』は、偉大なる失敗作として鑑賞する姿勢が、おそらく正しいのであって、ササキバラゴウとの対談でも勢いのみを褒めるような体となっている。
【島】…ああ、この本はもう出さなくてもいいんじゃない?(笑)。こんなものをまた印刷所さんが印刷しなきゃいけないかと思うと、やっぱり出すのやめましょうか!
【サ】いえいえ、出すべきですよ。(略)島本作品の極北というのか。中心の太陽じゃないけど、北極星みたいなもんで、その軸の中心を失ってはいけないような。
【島】無我の境地で描いた、一切の欲心のないまんがですよ。無我、無欲。
【サ】無我、無欲、そして無謀だったわけですね。
繰り返すが、こういった空気は、当時高校生だった自分も読みながら感じていて、次のような 台詞が出た場面では、無理に「逆境」→「無謀/墓穴」に引っ張ろうとして、どんどんわけがわからなくなっているよ!!!と突っ込んでいたのだった。
(な、なにっ)(そ…そんな無茶な)(どうする)(こっこれはまるで…)
「逆境だっ」
(いやちがう)(はきちがえるなっ)
「これは墓穴だ!墓穴がまたひとつ増えただけのこと…」
今回、途中離脱してしまったその続きを初めて読んだのだが、突然の「第一部完」ののちに始まる「第二部」は、地球を侵略する宇宙人と対決す るという、完全にタガが外れてしまった展開になっており、むしろ凄い!と興奮 しながら読んだ。
これまでに読んだ作品で似ているのは、さるマンの『とんち番長』かもしれず、とにかく、描き手の狂気が伝わってくる作品だといえそうだ。
島本和彦の作品らしく、名言(迷言)も登場するが、やっぱり、全体を通して「無謀」な感じがひしひしと伝わる作品だった。これほど、タイトルと執筆状況が一致する作品というのも珍しいのではないか?
たかが一瞬!!!
その一瞬さえつかむことができれば…
五人倒すにも
たったの五瞬!!
(ハギワラ1巻p172)