分かりやすい説明の技術3冊

「伝わる!」説明術 ちくま新書(551)

「伝わる!」説明術 ちくま新書(551)

上記2冊と以前読んだ以下の本は、内容が互いに似ている。
畑村式「わかる」技術 (講談社現代新書)

畑村式「わかる」技術 (講談社現代新書)

『伝わる〜』の言葉を用いれば、ポイントは、

  • 「わかる」とは、相互関係が把握できている状態である

ということ。
言葉での説明は「一次元的」で相互関係の把握には伝えにくいという特徴を持つので、

  • 説明しようとする「ターゲット」と同じ構造を持つ「ベース」を用いたアナロジー(類推)の方法が有効

ということを強調するのが、梅津信幸『伝わる〜』の主張だった。
「わかる」の定義について、梅津氏は、わざわざ『分かりやすい〜』を批判的に取り上げて、この本の言っていることは違う、という言い方をしているが、ここにはちょっと不満だ。梅津氏の主張する「アナロジー」の重要性については、『分かりやすい〜』でも言及されており、両者の説明にはそれほど違いがない、と感じるからだ。
『伝わる〜』は、アナロジーという道具に特化した技術の紹介を行っているが、『分かりやすい〜』は、アナロジーを含めた、もう少し広範囲の説明技術(例えば、「要点を先に言え」「論理的に話せ」など)に主眼を置いているだけである。梅津氏の批判は、『分かりやすい〜』の、ごく一部を切り取って扱っているに過ぎないと思う。

畑村洋太郎は、アナロジーを用いて物事を理解することについて「テンプレートが一致する」という言い方をしている。が、単純に、自分の中の「ベース」とのテンプレートの一致を越えて「わかる」ことを追求していくところが『畑村式「わかる」技術』にあって、ほかの二冊には無い部分だ。
この本では「テンプレートの一致」を以下の3つに分けて説明している。

  1. 要素の一致(リンゴをリンゴと知る)
  2. 構造の一致(アナロジー
  3. 新しいテンプレートの構築

新しいテンプレートの構築を行うために必要なのは「課題設定能力」であり、そのために日常の訓練(数量化訓練、逆演算、アウトプット)の継続が推奨されている。
3冊を比較すると、一番癖が無く、実用的なのが『「分かりやすい説明」の技術』。この本の15のルール」のうち「比喩を使え」について突っ込んで理解したければ『「伝わる!」説明術』。そして、相手に説明するというよりは、自分が理解することに意識を向けたければ『畑村式「わかる」技術』というところだろうか。星に差をつけるならば、それぞれ以下の通り。(☆は半分)

  • 『「分かりやすい説明」の技術』★★★★☆
  • 『「伝わる!」説明術』★★★☆
  • 『畑村式「わかる」技術』★★★★☆

  →(参考)1/19の日記