長新太という魔界〜『キャベツくん』シリーズ(全5冊)
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しかし、例えば五味太郎のように絵そのものがイラスト的に完成度が高かったり、長谷川義史のように書き込みが細かくギャグが散りばめられていたり、岩井俊雄のように、企画そのものが面白い、そういった派手な絵本と比べると、惹きつけるものが少なかったのです。
実際、何冊か読んでみても、絵は上手というのとは少し違うし、ストーリーはナンセンス過ぎて理解出来ないことが多いし、で、大人としてはイマイチと感じてしまっていました。ということで、しっかり最後に驚ける「つきよのかいじゅう」以外はあまり読むことがなかったのでした。
- 作者: 長新太
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しかし、最近になって、長新太がブームになってきています。
きっかけは『キャベツくん』。
長新太の絵本は、主人公がそもそも人間でないものが多く、「どろにんげん」や「ゴムあたまぽんたろう」に比べれば、「キャベツくん」は、むしろ普通といえます。
むしろ、相棒の、「ブタヤマさん」が“魔界”です。キャベツくんとニンジンさんでも、キャベツくんとブタさんではなく、いきなり「ブタヤマさん」という、何となく悪口っぽい呼称が、ワールドに片足突っ込んだ感じです。
そして、初登場シーンで「こんにちは」とあいさつしたキャベツくんに対する、ブタヤマさんの最初のセリフが「呼び捨て」&「一方的宣言」という突然のテンションで驚きます。
あのね、おなかがすいてフラフラなんだ。
キャベツ、おまえをたべる!
「キャベツくん」では、結局、ブタヤマさんはキャベツくんを食べることができません。可哀想に思ったキャベツくんが、ブタヤマさんにレストランで奢ってあげるという、衝撃的なラストには、異次元空間に迷い込むような気持ちになりました。
その他のシリーズ作品も、ブタヤマさんの同じセリフも登場するなど、同様の「長新太という魔界」が体験できます。中でも『つきよのキャベツくん』は見返しにあった、絵本あらすじにとても惹きつけられました。
キャベツくんが歩いていると、むこうから鼻がついて、ちょびひげをはやした大きなトンカツが近づいてきます。びっくり!
ちょびひげをはやした大きなトンカツ!
でも、ここでトンカツがでてきて、何となく、だからキャベツとブタなんだ、と一つ謎が解けた気分になりました。
長新太の絵本は、とにかく子ども受けがいいです。
絵がゴチャゴチャしすぎてなく、キャラクターに集中でき、何より、言葉遣いが面白かったり、ストーリーがオーソドックスではないのが爆笑を生むポイントでしょうか。うちの子を見ていると、2〜3歳でも面白がるのかもしれませんが、色んな物語の展開を知った5歳以上くらいの方が、よりその面白さを体験できると思います。
自分としても、これまで食わず嫌いで読まなかったせいもあり、まだまだ未読本がたくさんありますので、もっと「長新太という魔界」に踏み込んでいきたいと思います。