どうしてもインパルスを思いだしてしまう〜浦沢直樹『MONSTER』(1)〜(4)
- 作者: 浦沢直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1995/06
- メディア: コミック
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自分にとって浦沢直樹は、『パイナップルアーミー』も『マスターキートン』も読んだけど、『YAWARA!』と『Happy!』で止まっている。したがって、この漫画も『20世紀少年』も『PLUTO』も読んでなかったが、図書館で借りられることを知り、まず読んでみることに。
順調にドイツデュッセルドルフの病院で出世街道を歩んでいた日本人医師ドクター・テンマ。
「医者は人の命を救うのが第一だ!」「命に上下なんかあるもんか!」
医者の本分に立ち返るきっかけとなった一人の急患の子ども−−−ヨハン。一緒に運び込まれた双子の妹・アンナ。
ヨハンを救うために院長の意向に従わなかったテンマはあっという間に転落の人生を歩み始めるそのとき・・・
これだけでもかなり詰まった内容だが、院長が急死する四話目から、この物語は幕を開ける。
第1巻 ヘルDr.テンマ
1巻を読んで一番驚いたのは、“その少年”の名前、ヨハン・リーベルト。
インパルスのコントで非常に印象に残っていたヨハン・リーベルトの元ネタは、この漫画だったんだ!!と、完全にどうでもいいことで感動した。
9年後に、そのヨハン・リーベルトが「モンスター」であったことに愕然とするテンマが雨の中にしゃがみこんでこの巻終了。
↑自分が見たのは「キセル」の回(一作目)でしたが・・・。
第2巻 戦慄の誕生日
ヨハンの妹アンナ登場の巻。5話目「惨劇の館」がショック過ぎて、とても小学生には見せられない。その後の、警察が信じられなくなるくだりは非常にうまい。というか怖い。
印象的なのは、アンナ(ニナ・フォルトナー)が、テンマに残したサンドイッチ。ハンバーガーのような、しいたけのようなバンズのサンドイッチは本当に美味しそう。明確にテンマ側につく人間なのに、単独行を取ることになり、またもやテンマは一人になってしまい心細い。
第3巻 511キンダーハイム
ヨハンがいた特別孤児院511キンダーハイムは、旧東ドイツの実験場だった。行われていたのは精神改造、人間改造の研究ということで、若干異なるが、アキラがタカシやキヨコと一緒にいたラボを思いだした。鉄腕アトム(テンマ)+ブラックジャック(天才外科医)+AKIRA(特別孤児院)がMONSTERなのか!
第4巻 アイシェの友達
1話目の「残された女」が最高だ。
ひたすら「嫌な女」道を進みつづけるエヴァ。彼女が久しぶりに信じてみようと思った男性に、すぐに裏切られる形になり、ボストンバッグを二つ手に持ち、燃えさかる屋敷を出るラストが素晴らしい。
とはいえこの巻のクライマックスは、ヨハンをカリスマ視する「赤ん坊」らの企みによるトルコ人街焼き打ちのシーン。結局、アンナとテンマの努力によってそれを防ぐことができたのだが、二人の数分だけの邂逅のシーンも含めて、映画を見ているような気にさせられる。やっぱり浦沢直樹は凄い漫画家なのだと思った。(レストランから焼き打ちを待つシーンは『ダークナイト』を思い出しました)
さて、ヨハンはニ重人格者であったことが分かり、ヨハンを殺すことを固く決意したままのアンナも、フランクフルトを離れる電車の中で涙を流す。ヨハンを巡っては、ただの「悪を成敗」する話ではないということが示唆される。最大の敵は、同時に救わなくてはならない善の心を持っている、というのはプリキュアの最終回みたいだ。