佐藤大輔、伊藤悠『皇国の守護者』(1)〜(5)

皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

人と龍が共存する世界で、小さいながらも貿易によって繁栄していた<皇国>と海の彼方から侵略してきた<帝国>との戦争、それをきっかけとして激化する<皇国>内部の権力闘争を描く。

面白い作品には、「あ、これだ」と作品の価値を理解できる瞬間というものがあると思うが、『皇国の守護者』では、そのタイミングが、結構遅く、2巻半ばまでよくわからないままに読んでいた。
特に、戦記物を読みなれないせいもあり、1巻読破が難航。2度読み返してようやく戦況と登場人物を理解できた。
そもそも、戦記物には、策によって難関を突破する「ゲーム」的な印象が強かった
しかし、2巻半ば以降、苦境に立たされた主人公新城直衛指揮官としての決断、そして、その決断と裏腹にある責任感が繰り返し表現され、ゲームという印象は全くない、登場人物が生き生きとした作品だった。
また、自分としては、4巻のようなストーリー展開がありうると思っていなかったので、驚いたが、状況と、登場人物の性格を考えれば、納得の展開で、そういう意味では、非常にリアリティのある物語になっている。(また何人かのキャラクターの脱落=死も容赦しない)
だからこそ、新城と、<帝国>側の人間であるユーリア、カミンスキィ、バルクホルンらとの直接対面のシーンは、読者の気持ちを「萌え」上がらせる。
なお、ストーリーだけでなく作画が素晴らしく、巻末のおまけ漫画も含めて、その「見せ方」(構図・コマ割り等)も、最先端を行っているように思える。
惜しむらくは、道半ばの5巻での連載終了。
そもそも多くの人に支持されている作品が、連載中断を余儀なくされたということで、この作品に興味を持ったのだが、できることなら再開を望む。(中断の事情については、よくわからないのですが・・・)
原作にチャレンジするかどうかは不明。