土屋賢二『紅茶を注文する方法』★★★

紅茶を注文する方法 (文春文庫)
出張の新幹線で読む本は無いかと、キオスクで買った文庫本。土屋賢二という面白い文章を書く人がいるということは知っていたが、読むのは初めて。
これが結構面白い。4ページ程度のエッセイ集で、内容は、大概、屁理屈をこねる言い訳で、オチに奥さんや本棚が来るところなどは、ワンパターンなのだが、毎回手を変え品を変え、よくも思いつくものだ。御茶ノ水女子大の教授(哲学)だというが、さぞ学生に愛される先生なのだろう。
僕が好きなのは、スクラッチの損得を考える「計算が合わない」。土屋教授は、いろいろ考えながらスクラッチを2回購入する。次のように

  • 外れるものと思って一枚200円のスクラッチ宝くじを1000円で5枚購入したところ、600円の当たりが出た。
  • 当たった600円に400円追加して、再度1000円分購入したところ、今度は全部外れた。

この損得をどう考えるか?文章の中で、これに対する考え方として、以下の3つを提示している。

  1. 最初、1000円、次に400円使って、最終的に手元に一円も残らなかったのだから1400円の損
  2. 最初、400円損して、さらに400円損したのだから、合計800円の損
  3. 最初、600円儲けて、次に400円損したのだから差し引き200円の儲け

これに対して、「どう考えても3番目が正しい」と言い切る土屋教授。最高。*1こういうごり押しの文章が連続するのが、この本です。自分の失敗の言い訳を考えたい場合にお薦めの本です。

*1:でも2番目も正しいように思えてしまうところがギャンブルの怖いところ。