田中啓文『蹴りたい田中』★★★★
「蹴りたい田中」で第130回茶川賞受賞後、突如消息を絶った伝説の
作家・田中啓文。〜偉大なる生涯を辿る単行本未収録作8篇+αを〜
収録した遺稿集。
タイトル、紹介文を読んで分かる通り、パロディ本です。
ローマ人の物語と平行して読んでいて、あまりの駄洒落のくだらなさに閉口した作品。*1
ですが、ライトなSFが読みたいなあ、と思っている人にはお勧めできる作品です。
一応、ある程度の知識が問われる駄洒落・ネーミングもあり、僕自身も気づいていないところもあると思うので、そういう素養のある人の方が楽しめるでしょう。
WEB版『本の雑誌』の新作レビューでも
でも、なんで艦隊の名前が〈和紀〉なのか、私には良くわかりません……。
と言っている人もいますが、「戦艦大和+大和和紀」というだけの駄洒落で、内容には無関係なので、あまり気にしなくても十分楽しめます。
●内容について
収録作品
- 未到の明日に向かって
- 地球最大の決戦―終末怪獣エビラビラ登場
- トリフィドの日
- トリフィド時代
- やまだ道―耶麻霊サキの青春
- 赤い家
- 地獄八景獣人戯
- 怨臭の彼方に
- 蹴りたい田中
- 吐仏花ン惑星―永遠の森田健作
これらの作品のほぼ全部が、落ちの駄洒落を言うためにキャラクター名や設定、伏線が張られています。僕はかつて読んだことのないタイプの作品だったので、衝撃を受けました。特に衝撃を受けたのが「地獄八景獣人戯」です。内容は、少しグロくて好みではありませんが、最後の駄洒落で全てが許されるような構成には目から鱗。あとは「吐仏花ン惑星」もラストが結構美しいと思います。
パロディの元になった作品にも興味があるので、今後、田中啓文の他の作品と併せて読んでみたいと思います。
*1:一応駄洒落本の紹介らしく駄洒落で行ってみました。